首里劇場調査レポート その1【暫定版】

文:普久原朝充

首里劇場にて使われているコンクリートブロックの寸法が、現在の日本工業規格(JIS)の寸法と異なっていることに気づいたので、調べてみた。沖縄では1948年に米軍により米国製のブロック製造機が持ち込まれており、その際のコンクリートブロックの寸法が基準になっていた。同時期の日本本土でも、沖縄と同様の米国製ブロック製造機が持ち込まれていたようで、このときの寸法をメートル法のモジュールに修正したものが現在のJIS規格による寸法になったものと考えられる。沖縄のコンクリートブロックがJIS規格に置き換わるのは1972年の本土復帰以後なので、首里劇場で使われているコンクリートブロックも、米軍統治時代の名残りが感じられる部分であることがわかる。 

たとえば、メートル法モジュールとなっているJIS規格における呼び寸法200mm厚のコンクリートブロックの実際の寸法は190mm×390mm×190mm(厚さ×長さ×高さ)となっており、許容誤差は±2mmとなるように定められている。10mm分は目地代や左官代の幅と考えられる。

ヤード・ポンド法では呼び寸法8インチ厚コンクリートブロックの寸法は7(3/4)”×15(3/4)”×7(3/4)”(約196.85mm×400.05mm×196.85mm)となっており、JIS規格のサイズより少し大きい。1/4インチ分(6.35mm)を目地代とした8″×16″×8″となるようなヤード・ポンド法のモジュールになっているものと思われる。

補足:インチの表記は「”」、フィートは「’」。1インチ≒25.4mmにて換算 

参考文献

図版「アメリカ標準型ブロックの種類」は、竹山謙三郎 他編著『ブロック建築入門』(日本コンクリートブロック協会)1955より

表「形状および寸法」は、『コンクリートブロック規格およびその解説(1955)』より
「国立国会図書館デジタルコレクション」にて閲覧可能

狩野春一「補強コンクリートブロック構造用コンクリートブロック解説」(『コンクリートブロック規格およびその解説(1955)』所収)まえがきより

「日本工業規格JIS A 5406「空洞コンクリートブロック」が昭和27年8月に制定せられてから既に満3ヵ年を経過し、法律上再検討をおこなう時期になった。

そもそも我国におけるコンクリートブロックの歴史は相当古いもので何ら新しいものでわないが、戦前は殆んど発達を見なかった。今次大戦の結果、全国に亘る都市の戦災によって未曾有の住宅不足に来し、戦後簡易に不燃建築を得る方法の一つとして、ブロック建築が再び再検討せられるに至った。たまたま昭和24~25年、米国からコーパック、フレミング、ケント等のブロックマシンが輸入せられ、いわゆる米国式ブロックが作り初められ、また我国でもこれに刺戟されて種々の型式のブロックが工夫提示された。しかし当時は過去に見られたように一時的の現象として自然に立消えになるか、或は大いに発展するものか見当がつかなかった。また識者間にも悲観的見方をする向も少なくなかった。しかし輸入機械による製品が多数市場に出廻ってくるとそのまま放任することは将来混乱を来すおそれが多分にあるので、取敢えず米国式ブロックについて工業規格を作成する必要に迫られ、東京工大狩野博士立案の原案に基づいて委員会で審議が開始された。このように規格は最初は米国式ブロックのみを対象にしていたのである。しかし当時乱立した国産品の製造者間にこの規格が決定公布されると米国式ブロックに圧倒されるおそれがあるので、この際国産ブロックもこの規格に織り込まれることを希望してきた。そこで規格制定の方針は国産ブロックの中から普遍性のあるものの二、三を包含せしめることに変わって、その名称も「空洞コンクリートブロック」と名づけられ、構造上空洞部に鉄筋を挿入して補強して組積するコンクリートブロックに限定された。数次の委員会の審議によって昭和27年8月決定を見た次第である。爾来満3ヵ年を閲し、この間コンクリートブロック造の発展は驚異に値するものである。この原因の主なものは耐火建築物促進法の公布と木材資源対策とであろう。都市の不燃化と木材の節約が合理経済的になしうると同時に住みよい、耐久性ある建物を安価に供給する方法としてブロック造が一般に迎えられにる至った(原文ママ)。ブロック造の普及に拍車をかける原動力になったのはブロック規格の制定と、之に時を同じくして、日本建築学会で、ブロック造を含む特殊設計規準案が作成せられ、全国的に講習会を開きブロック建築構法上の指導を与えたことである。今年度は全国公営住宅のブロック造採用によって更に一段とブロック建築が普及するであろう。

斯様にブロック建築の隆盛に伴い、ブロック工場は北は北海道から南は種子島に至るまで大小取まぜ約300に上るといわれ、年生産量推定2,300万個に達し、製造機械も輸入機械40台以上、国産ブロックマシンメーカも数社を数えるに至っている。また国内にあった種々の形式のブロックは規格が制定せられてから徐々に淘汰せられ規格に規定された形状のものが主に製造せられるようになった。中でも米国式ブロック(即ちBI型)が全生産の80~90%を占める状況である。」