首里劇場通史〜沖縄最古の劇場70余年の物語(6)


文:平良竜次
首里劇場調査団・副代表
NPO法人シネマラボ突貫小僧・代表


新型コロナの中での営業と無観客上映

新たな展望が見えてきた首里劇場だが、それを一気に吹き飛ばすような厄災がひたひたと忍び寄っていた。2020年より始まる新型コロナ感染症の世界的流行である。5月に入ると

ご存知のように感染拡大を抑えるために沖縄県内の映画館は軒並み休業に入った。映画館で映画を見ることができない…当たり前が当たり前ではなくなる非日常の不安感が世界を覆う中、首里劇場のTwitteアカウントで政則館長が「上映再開するぞ」と気を吐いているではないか。さっそく首里劇場に伺うと、小さなアベノマスクを付けた政則館長は、新型コロナ感染拡大の真っ只中でも営業を続ける理由を話してくれた。

「そもそも、うちでは1回の上映で多くても観客が20~30人ぐらい。3密(密閉、密集、密接)もなく、換気もバッチリ。最初からNO密なんだよ!」

▲「コロナに負けるな!」と叫ぶ政則館長

まさに逆転の発想。だがしかし、感染を恐れる世相は想像以上で、無観客上映が続いた。

このままでは首里劇場は…誰しも心配する一方で、館長は次なる手を考えていた。

名画座としての新たなスタート

首里劇場の新しい展開。それは成人映画を終えて、懐かしき昭和の時代に綺羅星の如く作られた名作映画を上映する「名画座」へと衣替えすることだった。

館長によれば実は以前から検討していたことであるという。成人映画興行が下火になった今、どうせなら自分が好きだった名画を上映してみたい。

「フィルムの映写機は準備から片づけまでやることがとにかく多くて大変だった。2014年にデジタルのプロジェクターに変えて以来、時間的なゆとりが出来て、先のことをじっくり考えるようになったよ」

そして2021年5月1日。首里劇場はついに昭和の名作を上映する“名画座”としてスタートした。再開を飾る1本目は、吉永小百合主演の『あゝひめゆりの塔』(1968年/舛田利雄監督)。初日には新聞、テレビなどマスコミが取材に駆けつけた。作品は旧作のためにポスターが無いので、イラストレーターのイリー・Kさんが手描きで作成。月イチで発行するチラシ兼月間スケジュール「首里劇場だより」も、彼の手によるものだ。

政則館長のチャレンジを応援しようと、劇場を愛する有志が集まり「首里劇場友の会」が結成され、記念イベントとして8月7日にオムニバス映画『RUN!-3films-』(2019年/畑井雄介・土屋哲彦監督)が上映された。

▲政則館長発案の“ハブ拳法”のポーズを構える「首里劇場友の会」の面々

昭和、平成、そして令和―

長きに渡って愛され続ける首里劇場。この空間が残っていること自体が首里、そして沖縄の娯楽、芸術、文化における僥倖といえるのではないだろうか。

新型コロナ感染症の世界的流行は未だ収束する気配が見えないが、首里劇場はきっと大丈夫。自信を持って言い切れるのは、70年余りに渡って激動の時代を泳ぎ切った歴史が証明してくれているからなのだ。

(おわり)

 

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【参考文献】

「具志川市史」第五巻(具志川市教育委員会)

「具志川市史だより第15号」(具志川市教育委員会)

「工務部会記念誌」(旧沖縄民政府工務部会)

「会議録10 沖縄民政府 1947年 7月~12月」(沖縄民政府)

「那覇市史 資料編第3巻1 戦後の都市建設」(那覇市)

「那覇市史 資料編3巻6 那覇市長事務引継書・他」(那覇市)

「琉球肥料30年史」(琉球肥料株式会社)

「久米島製糖株式会社二十周年記念誌」

「昭和時代の首里の日々」(首里人の文化研究会)

「沖縄まぼろし映画館」(ボーダーインク)

「沖縄島建築 建物と暮らしの記録と記憶」(監修/普久原朝充、写真/岡本尚文、トゥーヴァージンズ刊)

【取材協力】

金城政則、南条幸子バレエ研究所、南条幸子、阿波連本紀、真栄城光秀